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真っ白なキャンバス3周年 『君と生きる』公演レポート

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※本記事は真っ白なキャンバス3周年の集大成として行われた『君と生きる』公演のセットリストをなぞりながら一年間を振り返っています。およそ15,500文字の長文となっておりますので、読まれる際にはご了承くださいませ。  

 2020年11月18日(水)ZeppDiverCityTokyoにて真っ白なキャンバスの3周年記念ライブ「君と生きる」が開催された。

  本公演のチケットは発売早々に完売。新型コロナウイルスの影響により椅子席での開催となり、席数は通常よりは少なくはなっていたものの、ZeppDiverCityという大きな会場での開催とあって少なくはない数。メジャーデビューを経てますます人気が過熱する真っ白なキャンバスの勢いを感じさせる。

 本公演は事前の特典会や、SSチケットの購入者は本番前のリハーサルの見学など、この特別な一日をさらに印象付ける企画も充実。

 会場前には開演を待ちきれないファンが早い時間から集まっており仕事を休んで万全の準備を整えた社会人や、白キャンのメイン層である学生の中には学校終わりに制服で駆け付けたと思しき者の姿も見受けられ、ファンの熱量の高さを感じさせる。

 また、メジャーデビュー以降に増加した女性のファンの姿も目立ち、中にはメンバーの衣装を自作して着用しているファンもいるなど多種多様な年代にファン層が拡大している印象を受けた。

 その各々が開演の時間を待ちながらこの日のライブに向けての想いを語る。新型コロナウイルスの対策のため入場に想定より時間がかかり、開演時間は押し気味。ざわめきが続く場内であったが、会場が暗転すると一転して静寂の空間へ。

「未来を描いた先に何が見えるのだろう。」小野寺梓の儚いポエトリーと共に会場のスクリーンにオープニング映像が映し出され、真っ白なキャンバス3周年記念ライブ『君と生きる』は開演した。

 ステージ前には半透明のスクリーンが張られている。おってメンバーが入場し、光に照らされたシルエットがスクリーンに映し出される。

 SEに続いて始まった1曲目は白キャン始まりの楽曲となる『アイデンティティ』。やはり白キャンのライブの始まりはこの曲しかない。

 

新型コロナウイルスのため観客の声は出せないものの、ファンの熱気が一気に会場を包む。

 そんなファンの熱気を焦らすかのような舞台前の真っ白なスクリーンはかかったままで、微かな光に照らされて歌い踊るメンバーのシルエットは幻想的。

 その美しさに心奪われる一方でメンバーの姿を見たいという感情が高まり続ける。 その気持ちを見透かされたかのように、サビ前で真っ白なスクリーンが落とされメンバーの姿が目に入る。 喜びを隠し切れないメンバの表情にこの日のライブにかける思いを改めて知る。

(PHOTO by 相楽信之助)
好きなことがしたい 心の奥にある想い
呟くことさえもダメって言うかな

 アイデンティティ一番のフレーズであり、今回の3周年記念ライブの裏の立役者である橋本美桜が歌うパートだ。

 他者を尊重することと、自分を押し殺すことは異なることである。しかし、その境界はひどく曖昧で、時に人の心を動けなくさせる。

 優しき者は他者を傷つけまいと、その柔らかな部分を守ろうとして互いの理解から遠ざけてしまう。

 真っ白なキャンバスは自由なグループであり、個人が尊重されているグループであり、そして繊細で優しい者ばかりが集ったグループである。

 橋本は加入からわずか半年後の2019年6月のMARQUEE vol.133のインタビュー記事で「このグループ、まとめる人がいないんだな」と思った、と語っている。そんな彼女は表向きに見せるさばさばしたキャラクターに反して、慈愛の情に溢れたメンバーである。

 橋本はメンバーの気持ちが落ち込んでいると思われる日には、さり気なくSNSで応援するコメントをしたり、レッスンなどで疲れている中でも他メンバーのツイキャスに顔を出したりなどの気遣いを見せる。

 パフォーマンスにおいては、ダンスフォーメーションにおける立ち位置の調整をしたり、歌においては曲ごとで歌いまわしや声色などをその日のグループのコンディションによって微妙に変えるなど、そのテクニックの深さで全体の司令塔のような役目を果たしておりその貢献度は高い。

 また、新メンバーが加入した直後には、ダンスが仕上がっていないメンバーがライブで浮いてしまわないように自らのパフォーマンスのレベルを調整するなど、実に深いレベルでグループを支えた。

 そんな常に全体を見渡している橋本は、本ライブのMCで「居心地のよいグループになった」と語っている。

 この3周年記念ライブ前に白キャンは初の合宿3泊4日で行っている。

 SNSでは朝の運動の風景や食事など和やかな場面が投稿されていたが、実際には携帯を触れたのはその時間のみだったらしい。朝から晩までびっしりと詰め込まれたスケジュール、集団行動が苦手なメンバーたちがみんな一つの部屋で共に時間を過ごす中で各々が胸に抱えながらも、相手を慮って伝えられなかった気持ちを交わすことが出来るようになったという。

 この合宿を経て個々の長所はそのままに、グループ全体の一体感が生まれ、白キャンのパフォーマンスは劇的な進化を遂げた。

僕が今生きる理由はなに?
ずっと探していた そのクエスチョンの正答(こたえ)はない
僕の声 君の声 僕は僕らしくやるんだ
その想いがきっとアンサー

繊細で優しくて、己の考えがある彼女たち、これからも上手くは行かないこともあるだろう。でも、彼女たちは正答のない想いをそのまま抱えて、やがてアンサーを見つけていくだろう。

 冷静にグループを見つめ、そしてその献身と慈愛でメンバーを支えてくれる橋本美桜がいれば何も心配はいらない。私はそんな気がしている。

(PHOTO  by よっきゅんさん)

 アイデンティティに続く2曲目は『闘う門には幸来たる』。

 白キャンのインディーズ1stシングルであり、フリにジャンプが多く体力消費が最も大きい曲だ。

 「真っ白なキャンバス3周年記念公演”君と生きる”始まりました。今日は私たちと一緒に想い出を作りましょう」と冒頭で小野寺梓が煽りを入れ、橋本美桜は誰よりも打点の高いジャンプで魅せる。

 白キャンは尻上がりに調子を上げるメンバーが多い中で、最初からトップギアでのパフォーマンスを繰り出してライブの勢いをけん引する橋本の存在はここでも貴重だ。

 会場のモニターが移動し5分割され、各々のメンバーの姿が映し出される。このモニターはライブ全般を通じて演出を盛り上げるのだが、この移動についてはすべて人力で行われていたという。

 今までのライブ史上最大の舞台演出も相まって会場の熱気は一段と高まりを見せる

(PHOTO by りくやぬさん)

 続く3曲目は『パーサヴィア』。

 浜辺は2020年7月11日の『BRAND New PALETTE』でデビューした新メンバーであるが、そんな彼女が最も好きな曲であるという。

 白キャンのダンスフォーメーションはステージ映えするように作り込まれているが故に複雑であり、ただそれをこなすだけでも相当の技量が要求される。

 本日のライブ終了時点で白キャンの楽曲は22曲になったのだが、加入からわずか4か月の期間でそのすべてのパフォーマンスをマスターした。それもレベルアップした先輩メンバーの中にあっても遜色がない高度なレベルでである。

 ましてや浜辺は学生の身であることから学業も忙しく、緊急事態宣言の終息後は週末のライブ活動も復活し時間もない中でだ。

 途中には先輩メンバーの生誕祭もありそちらも疎かには出来ない。3周年記念ライブにむけて心身ともに追いつめられる状況下であったが、浜辺はその苦労をファンに見せたことはない。

 浜辺は今年のアイドル新人王を選ぶ際に間違いなくノミネートされるほどの逸材である。

 しかし、 彼女がどれほどの逸材であったとしても、わずか4か月で22曲をマスターするためには見えないところで相当の努力を重ねてきたことは想像に難くない。

 同期の秦はるかが健康上の理由で脱退した後はひとりきりの4期生となり、フォーメーションは6名から5名に変更。大幅な変更がる中で心が折れてもおかしくはない状況下で、彼女はそれを笑ってやり遂げたのだ。

今 踏ん張って踏ん張って 踏ん張って耐えるんだ
もう一歩もう一歩 もう一歩届くかな
いつか僕らはやり抜いたことが きっと自信になるだろう

  浜辺にとって初の周年の記念ライブという大きな舞台。2020年12月号のBUBKAでのインタビューでは「Zeppまでにステージ慣れしたい」というコメントをしている。

 そんな彼女はほのかな緊張を感じさせながらも、ファンの期待を遥かに超えるパフォーマンスを繰り出した。

 アイドルになれた喜びを感じさせる天衣無縫の笑顔と私をもっと見なさいとでも言いたげな小悪魔の笑顔を携えて。

 浜辺ゆりなという原石が磨かれていく軌跡をこれからの我々は目にしていくのであろう。 彼女がどのようなアイドルになっていくのか、その逸材の今後を見届けていきたいと思わせた。

(PHOTO by りくやぬさん)

4曲目は『共に描く』

 2020年5月11日に発表された共作プロジェクト『With Palette』により生まれた楽曲だ。

 2020年は新型コロナウイルスの蔓延によりアイドルにとっては苦難の時代であった。ライブ等の開催はままならず、ファンにとっても苦しい期間が続いた。

 そのような状況の中で、ファンと共に何かをしていきたいという運営の想いが形となったのがこの共作企画である。

 ファンが楽曲等の作成に関わるというのはアイドルの企画としてはなかなかに例がない。しかしながら応募期間は20日程度と短かったものの100を超える作品の応募があり、ファンの白キャンというグループへの楽曲への関心が高いことを改めて実感させる結果となった。

 また、本企画の後にはファンと何かを創り上げていくことを目的として2020年6月8日には『PWCオンラインサロン』も設立された。

 その後の2020年6月22日に行われたオンラインワンマンライブ『共に描く』では、グループのコンセプトが「あなたと一緒に、大きな夢を描いていきたい。この真っ白なキャンバスに。」に変更となり、さらにファンと共に進んでいくというその機軸を強く打ち出していく。

 本曲は浜辺ゆりなにとって初めて白キャンで参加する楽曲であり、MV撮影はメンバーとの顔合わせをした次の機会に撮影されたそうで、その日は緊張で家に帰ってすぐに寝てしまったという。

 そんな浜辺も今ではメンバーに溶け込んであり、その表現力で観客を魅了する。

(PHOTO by りくやぬさん)

自己紹介のMCを挟んでの5曲目は『白祭』

  「ZeppDiverCity楽しんでいけますか。私たちと一緒に最高の空間を作っていきましょう!」と西野千明が煽りを入れ、曲が流れると会場はさらにヒートアップ。

 西野は曲の移動中にメンバーに笑顔で話しかけるなど、ライブを思いっきり満喫している様子に会場の熱量がさらに上昇する。

  西野はさらに自らのパートでステージ前面のお立ち台に足をかけさながらロックバンドのように歌い、また笑顔であったかと思うと、いきなり煽情的な表情を入れるなど会場のファンを沸かせる。

(PHOTO by よっきゅんさん)

 6曲目は『全身全霊』

  ここぞという場面での重要曲の印象も高い本曲の序盤での登場に意外性を感じたものの、この直後に披露されたの『セルフエスティーム』も含め、怒涛の前半戦の始まりとなる構成であったことを後になって知る。

 全身全霊は白キャンにとって色々な意味を持つ曲であり、一年目は初代リーダー立花悠子の卒業、二年目はTIFメインステージ争奪戦の奮闘、そして三年目は白キャンというグループの生き様を示す重要な曲となっておりファンの人気も高い。

 また、本曲は伸びのあるメロディーにあわせて、各メンバーの声の魅力と成長ぶりを存分に味わえる曲でもある。

 橋本美桜のボーカルとしての確かな実力、西野千明の充実一途の歌唱力の向上ぶり、そして浜辺ゆりなの粗削りな全力感などどれも素晴らしい。

 そして現在のアイドル界で最高峰クラスの表現力を誇る小野寺梓、そして最高峰クラスの歌唱力を誇る三浦菜々子の白キャンのメインボーカル二人の歌唱の神髄を味わえる曲である。

 生きたい意味とか見出せず 星降る夜に願った日もある

全身全霊は三浦の歌唱で始まる。 それを受けて小野寺は歌う。

 わかっているんだ 甘くはないと 

 心の深淵を灼きつくすかのような三浦菜々子の情熱のボーカルは太陽への咆哮のように響き、儚さと美しさを持つ小野寺梓のしなやかなボーカルは月への祈りのように訴えかけてくる。

 曲後半の落ちサビ部分では小野寺が歌えば三浦はその上を行き、小野寺はそれを受けてまたさらにその上を行くという、まるで闘いのような一歩も譲らない白キャンの二人のメインボーカルの歌声は最高のステージを創り上げていく。

(PHOTO by よっきゅんさん)

7曲目は『セルフエスティーム』

本曲の見所の一つである冒頭のソロダンスは麦田ひかるの卒業にあたり、小野寺梓が引き継いでいる。

麦田は芸術的ともいえる卓越したダンスパフォーマンスを誇っていたメンバーであり、小野寺はこの部分を引き継ぐに際してその重圧の大きさを語っている。麦田はそんな小野寺を慮って卒業後もダンスについてレクチャーしたというエピソードがあるほどだ。

 そんな本曲は完成度の高さに加えて歌詞のメッセージ性も強く、現在の白キャンに欠かせない重要曲になっている。

  橋本美桜は鋭いダンスの回転数をさらに加速させ、感情を吐き出すかのように時には荒ぶり、時には達観するかのような歌唱でその表現の引き出しの多彩さを見せつけると共に、白キャンの第三のボーカルとしての存在感を示す。

 『あぁ このまま飛び込む勇気があれば』 白キャンの中でも最もセンセーショナルな歌詞はかって鈴木えまが歌っていた。そのウィスパーボイスと唯一無二のキャラクターでこの危うい歌詞を成立させていた鈴木の存在は偉大だ。

 そして、今この部分は西野千明が引き継いで歌っている。グループの中でも一番元気なイメージのある彼女が、伏し目がちに優しい声で懇願するかのように歌う様子は新たな曲の解釈と共にファンの心を締め付ける。

8曲目は『Whatever happens,happens.』

 そのリズムの激しさもあって白キャンのパフォーマンスのバロメーターを示す一曲だ。

 「パワーアップした私たちを楽しんでください」と浜辺ゆりながコメントして曲が始ったが、そのコメントに偽りなく、パワフルなパフォーマンスでファンを魅了する。

 三浦菜々子は曲中で「ZeppDiver白キャンと一緒に最高にぶち上がっていこうぜ」と煽り、一段と熱狂を加速させてゆく。

 激しいビートのラストは西野千明がセンターで締める。西野は白キャンで最も背の高いメンバーであり、その立ち姿の美しさが一段と曲を映えさせる。

(PHOTO by けいたさん)

 そんな西野の成長は9曲目に披露された『untune』でさらに明確となる。

 本曲は2019年12月31日の白キャンの”Thanks 2019 大大大感謝祭”で披露されたのが最後となっており、また披露された機会も少ないことからイントロが流れるとファンにざわめきが走る。

 そんな会場の空気は『Whatever happens,happens.』のラストのフォーメーションからそのまま西野千明がセンターででソロのダンスパートを完璧に決めると一変する。

 西野は加入時から一貫してダンスが超苦手だと公言している。それは、加入わずか3日でお披露目のステージに立ち踊れなかったトラウマも大きいのだが、ダンスの上達に時間がかかったのも事実である。

 しかしそれは誤魔化すことなく苦手なことに真正面から向き合った故であったことを今になって知る。

 彼女のダンスは非常に美しいステップを刻む。それはどこまでも基本に忠実に、そして愚直なまでに繰り返しのレッスンにより体に染み込ませないと出来ないことだ。

 そしてそんな彼女の進化は4期生が加入したことも多く寄与している。 新加入したメンバーがダンスで苦労するその苦しみをもっとも理解しているのは、加入当初に誰よりも踊れなかった西野に他ならない。

 西野は加入した4期生に対して居残りの練習に付き合ったり、その成長を見守っていた。そして、後輩を導こうという先輩としての自覚が西野の爆発的な成長をもたらしたように思える。

 西野本人もライブを心から楽しめるようになったと語っているように、4期生加入後の西野はそれまでにどこかで感じさせていたダンスへの苦手意識を感じさせなくなり、その長い手足を存分に生かした伸びやかなパフォーマンスが白キャンに不足していた部分を補い全体のパフォーマンスを引き立てる。

 そしてダンススキルが上達したことにより、彼女の持ち味である表情の豊かさが一段と発揮されることにより表現力が増しただけでなく、歌唱力の向上をももたらしさらに彼女のパフォーマンスの魅力を高めることとなった。

  曲のラストにかけては橋本美桜がセンターでその低音ボイスと歌唱力でクライマックスに向けて盛り上げる。 そしてラストは再度西野がソロのダンスで魅せる。そこには3期生の確かな成長があった。

(PHOTO by よしフォトさん)

 10曲目は『清涼飲料水』

 橋本美桜生誕祭2020で部分的に披露されたものの、フルで披露されるのは2020年3月18日の「メジャーデビュー記念 Special YouTube LIVE」以来であり、また、ファンの面前で披露されるのは2020年2月16日の「鈴木えま生誕祭」以来となった。

 浜辺ゆりなにとってこのゾーンは初披露の楽曲が続くが、堂々としたパフォーマンスぶりは彼女の並々ならぬ努力を改めて感じさせる。

 本ライブに向けてのレッスンが本格化した時期に、各メンバーに自分のパフォーマンスの見所を聞いたことがあるのだが、どのメンバーも自分のことよりも浜辺の頑張りを見て欲しいと語っていおり、この日はその真意を身をもって知ることとなった。

(PHOTO by よっきゅんさん)

11曲目の『らしさとidol』は、発売から8か月を経てファンの前で初披露となった。

 メジャーデビューシングルのカップリングである本曲はメンバーの心情ととリンクする歌詞が秀逸な一曲である。 白キャンの歌詞は初期曲の多くを作詞したシロトリリオン礎を作り、そしてmimimy氏がその世界観を発展させてきた。

 そんな長きにわたりメンバーを見てきたmimimy氏だからこそ描けた『らしさとidol 』という楽曲。そのポエトリーパートは彼女たちのアイドルの姿でいるうちには決して見せることのない、心の奥底からの叫びであるように感じられた。

(PHOTO by よっきゅんさん)

転換による小休止を挟んで12曲目に流れたのは新曲『ルーザーガール』。

 インターネットミュージック界で大人気の「ツユ」のぷす氏が作詞作曲を手掛けた曲だ。

 プロデューサーの青木氏は「今まではニーズに合わせた楽曲づくりをしていたが、これからはやりたい音楽をさらに推し進めていく」と今後の白キャンの音楽性にのあり方ついて示している。

 そしてその方向性としてずっと真夜中でいいのに、ヨルシカ、YOASOBIなどのグループを挙げており、本曲はそんな新たな白キャンを感じさせる楽曲となった。

 画面にはアニメーションが流れ、「あのね、わたしルーザーガール」と小野寺がその甘い声の特徴を生かして歌い出す。 そして三浦菜々子の癖を強く聞かせた歌唱、橋本美桜のテクニックが一一段と映え、成長した彼女たちのボーカルがどのように今後発展していくのか新たな可能性を感じさせる。

(PHOTO by けいたさん)

13曲目は『My fake world』 。白キャンの歌姫である三浦菜々子のボーカルが一段と冴えわたる曲である。

 そんな三浦であるが以前に所属していたグループではDJ担当をしており、ダンスや歌を本格的に行うようになったのは白キャンに加入してから。

 それが2年ちょっとで“日本にエールを!!”をコンセプトに歌唱力に定評のあるアイドルが集められた『Cheer song project』のメンバーに選出されるなど、白キャンの内部だけにライブアイドル界においてもその歌唱力の評価を不動のものとしているのは驚異と言えるだろう。

 三浦菜々子は歌だけではなく、女優としても活躍する表現力、小さな身体を感じさせないダイナミックなダンス、ファッション、写真、文章に司会のトークまで幅広いマルチな才能を誇る天才と言える存在だ。

 しかし才あるがゆえに、彼女は表現者としての苦悩の海に沈んでしまうこととなる。

(PHOTO by けいたさん)

14曲目に流れた『モノクローム』は白キャンの中で最もスローテンポな曲である。しかしながら、剝き出しの感情が表現される、ある意味最も激しい曲であり、白キャンの最重要楽曲のひとつと言ってもよい。

 登場頻度は少ないものの、白キャンの好きな曲を聞かれたときには上位候補として挙げる者が多く根強いファンを持つモノクロームであるが、白キャンの黎明期においてはコールなどが入らないため、盛り上がらない曲としてメンバーやファンの受けが必ずしも良かったとは言えない曲でもあった。

「生きててごめんね」そう呟いて背を向ける

 アイドル楽曲としては衝撃的すぎるフレーズ、そして本曲の主人公は歌の序盤においては前向きな希望を見つけるものの、歌詞の進行と共に孤立を深め最終的には何の救いもなく完結するといった具合である。そんな本曲は三浦が白キャンで最も好きな曲だという。

 三浦は本公演の最後のコメントで、自分の弱さを周りに出すことが出来なくて、それでもしっかりとしていないといけないと思って苦しくなっていた旨を語っている。もしかすると、三浦がモノクロームを好きだと言っていたのは、そんな彼女なりのSOSだったのかもしてない。

 合宿の後に三浦は明らかに代わった。明るく優しげでありながらも、大人を演じるためにどこかで線引きのあったような彼女は、今ではメンバーの中でも子供っぽさを感じさせるようになった。おそらく今が彼女の本来の姿なのだろう。

 そして、そんな彼女の内面の変化はパフォーマンスにも表れ、今までは全体の配分を考えて行っていたパフォーマンスは最初から全開モードで繰り広げられ、ファンの想像をはるかに超えた圧倒的な進化を遂げた。

 それは、自分がもし倒れてしまっても、誰かが手を差し伸べてくれるという安心感が彼女の鎖を解き放ったからに他ならない。

 先述したように三浦菜々子は天才であり、ファンからすると不満なことなど一つもない。しかし、彼女はやがてまた苦悩の海に沈んでしまうのだろう。

 それはどこまでも表現者として高みを目指そうとする、才ある者しか感じられれない孤独なのだから。

 そして、仄暗い海の底から、我々の想像もできない世界を切り開いて彼女は帰還するだろう。そして、ファンの心の奥底まで心を届けてくれる。そんな素晴らしい歌姫が白キャンにいることをファンとして誇りに思う。

(PHOTO by すーさん)

15曲目は『HAPPY HAPPY TOMORROW 』

 小野寺梓がスーパーあずにゃんタイムと名付けた自身のパートの笑顔で、会場みんなが笑顔に包まれる白キャンの中でも特に幸福度の高い曲だ。

 その小野寺はTwitterのフォロワーも4万人を超え、近日は雑誌グラビアへの登場も多く、この一年で誰しもが認める人気アイドルへ飛躍を遂げた。

 しかしながら、そんな彼女も最初から順風満帆であったわけではない。

 小野寺梓はアイドルの神様に選ばれた人間ではない。白キャンへの加入に際しても、一度はオーディションで落選し、その後活動を辞退したメンバーが出たため補充で加入している。

 アイドルになりたての頃の彼女は愛嬌のある可愛いルックスは健在であったものの、それだけで人気になるほど甘い世界ではない。

 しかしながら、彼女には抜群の歌唱力も、ダンスをするうえでの優れた身体能力も、そしてファンを魅了する笑顔も十分には持ち合わせていなかった。

 『HAPPY HAPPY TOMORROW 』のMV公開直後には上手く笑えていない、と悩みを述べることもあった。

 また、背が高く見えるのが嫌で靴を脱いで歌っていたりもする。彼女の今までの道のりは、数多くのコンプレックスを抱えながらもがいてきた歴史であると言っても良いかもしれない。

 そんな彼女のアイドルとしての向き合い方はストイックそのもの。プロデューサーからご褒美をもらえるとなった時に要求したのはボイストレーニングであったり、 歌うために必要な喉や鼻のメンテナンスのために病院に足繫く通っていたり、表現力を磨くために研究を重ねたりなど自己研鑽のエピソードにはいとまがない。

 小野寺が何の後ろ盾もない小さな事務所のありふれた存在から人気アイドルになったのは決して神様がもたらした奇跡ではない。全て彼女のたゆまぬ努力がひとつひとつ積み重ねてきたものである。

 そんな経緯もあって小野寺は多くの少女たちの希望となっており、彼女を目標とするアイドルは数多い。

 白キャンのエースから新型コロナウイルスの影響により冬を迎えているライブアイドル界を背負って立つ存在へ。

 そんな彼女のとびきりの笑顔は、今日もまた誰かを幸せにしている。

(PHOTO by よっきゅんさん)

16曲目は白キャンのインディーズ2ndシングル『いま踏み出せ夏』。

 サビではメンバーの動きあわせて手が高く掲げられる。また、あるパートではファンも精一杯のをジャンプをメンバーと共に行い開場が一体感に包まれる。

あっという間に過ぎてく
当たり前じゃない ありふれた日常は
風にさらわれて どこか遠く

楽しい時間はあっという間に過ぎ、ライブの終わりが近づいていることを感じさせる。

(PHOTO by よっきゅんさん)

 17曲目は『SHOUT』。3周年ライブに向けて封印されており、満を持しての登場に会場のボルテージは一気に最高潮となる。

 今やアイドル曲のアンセムとして多数カバーされ、また海外アイドルにおいてもカバーされるなどその人気は広がる一方だ。

「会いに行く」か゛最上位
何かが落ちたような気がした 日に日に積もる想い
何回会っても、どんなに想っても 変わらない想い
言いたいことが積もり積もるんた

 2020年は新型コロナウイルスの蔓延によりファンにとってもアイドルにとっても辛い時期が続いた。だからこそ余計にこのSHOUTの歌詞が心に染み渡る。

(PHOTO by よっきゅんさん)

18曲目となった本編ラストは『自由帳』。白キャンの始まりを告げた一曲であり、ファンの思い入れも深い曲だ。

 会場のスクリーンには歌詞が映し出されると、これまでの白キャンの思い出が走馬灯のように駆け抜け、本編は終了した。

 例年であればファンの掛け声によりアンコールが行われるのだが、今年は新型コロナウイルス感染予防のため声出しは禁止。そのため、拍手のみでアンコールの呼びかけが行われる。

 会場に明かりが灯るとスペシャルムービーが放映される。添えられた文字に会場のファンが涙する。

3年間描き続けたキャンバスは何色になったんだろう
出逢いと別れを繰り返す中で
私たちは誰かの想い出になれましたか
想い出は嘘をつくことが出来ないから
これからもずっと寄り添っていこう
いつか描くキャンバスが無くなったとしても
呼吸をするのも忘れるくらい一瞬で
かけがえのない時間をこれからも過ごそう
この5人ならきっと大丈夫
真っ白な世界を”君と生きる”
(PHOTO by すーさん)

アンコールトップバッターの19曲目は『桜色カメラロール』。

 記念すべきメジャーデビューシングルは、麦田ひかると鈴木えまという初期メンバーの参加する最後のシングルとなった。

 本レコーディングを実施しているときに麦田の卒業は既に決まっており、メンバーにとっては旅立ちと別れのイメージが特に強いという。

 そんな本曲は、作詞作曲に新たな作家が採用されたことや、王様のブランチのタイアップとして採用され、一般への浸透を主眼に置かれたため従来の白キャンの楽曲と雰囲気が大きく変わった曲でもあり、公開当初は今までのコアなファンには受け入れがたいという意見も多く見られた。

 しかしながら、曲調が異なっても変わらない白キャンの魂を表現するメンバーのパフォーマンスに、ライブを重ねるごとにファンに受け入れられていった。

 また、メジャーデビューによりこの時期にファンになった者も多く、初めて白キャンを知った者が多い曲でもあるのも特徴だ。

 様々な人の色々な思いを重ね、これからも長く歌い継がれていくであろう。

 桜の花びらに見る人の様々な想いを重ねて。

(PHOTO by けいたさん)

 続くアンコール2曲目、通算20曲目は本曲は『桜色カメラロール』のカップリング曲『ダンスインザライン』。長らく白キャンの作詞作曲を手掛けてきたmimimy氏と古屋葵氏の黄金タッグによる一曲だ。

 白キャンの楽曲はそのほとんどを古屋葵氏が手掛けているのだが、メジャーデビューシングルの表題曲は別の作家のものとなった。多くのファン層を獲得していくためには、色々なジャンルの曲をしていく必要があったのだろう。

 しかし、カップリングとし古屋氏の名前が登場したことにより白キャンファンは安堵の声があがる。そして、 今までの白キャンにはない系統の楽曲でありながらも、しっかりと白キャンらしさを感じられるエッジの効いた作品に惜しみない賞賛を述べた。

  これから白キャンが進んでいく中で、色々な作家の楽曲が展開されることとなるだろう。 でも、古屋氏の楽曲は白キャンの血液としていつまでも重要な役割を果たしていくだろう。

(PHOTO by よっきゅんさん)

ラストとなる21曲目は『PART-TIME DREAMER』は青木プロデューサーが最も好きな曲であるという。

 白キャンは新体制に移行するに際して「一緒に走ってく伴奏者のような存在になる」という想いを込めて『あなたと一緒に、大きな夢を描いていきたい。この真っ白なキャンバスに。』 とコンセプトを変更している。

この世界で勝ちたい ひとりでは無理だな
誰かと手を取り合う勇気があればな

 昨年までとは比較にならないほど人気となった真っ白なキャンバス。それでも昔と何も変わらないメンバー達を表すかのような白キャンそのものともいえる本曲は これからもますますその重みを増していくのであろう。

 いつの日か夢の日本武道館に立つ日まで、手を取り合いながら。

(PHOTO by よっきゅんさん)

本編の終了後には重大発表がなされた、

1 初の冠番組「真っ白なキャンバスの白チャン!」の放送

2 ドキュメンタリー番組「真っ白な詩~僕たちは強く生きる~」の放送

3 1stメジャーアルバム「共創」発売 &小野寺梓の作詞での参加

4 Zepp Nambaでの「君と生きる」大阪公演決定

 これまでで最大規模であるZepp Diver Cityでのライブは、今までの白キャンの最高傑作のライブとなった。4年目に突入しますます勢いを加速する真っ白なキャンバスからますます目が離せそうにない。

浜辺ゆりな コメント

 今日は本当にありがとうございました。白キャンの記念日をみんなと一緒に過ごせたこと私がメンバーとして過ごせたことが幸せです。

 今日が凄く楽しみだったんですけど、楽しみな反面不安もいっぱいあって、まだ、一般人だった私が4か月でZeppに立たせていただくというプレッシャーもあったんですけどメンバーに迷惑をかけちゃったときでもメンバーは凄く優しくしてくれたし、ファンの皆さんが凄い毎回暖かい言葉を言ってくれて支えられてて、そのおかげで今日まで頑張れたと思います。

 次からは4周年になります、私ももっと成長できるように頑張ります。これからも真っ白なキャンバスをよろしくお願いいたします。

西野千明 コメント

 みなさんありがとうございます。本当にこのワンマンライブがまだ終わってないけど成功してよかったなって思ってます。来てくれている皆さんとか、配信見てる皆さん、関係者の皆さん、この5人のメンバーのおかげでこんな素敵な空間を作れて本当に本当に幸せです。

 でもこれがまだゴールじゃないので、あくまでも通過点と思っているので、真っ白なキャンバスももっと上に上がっていくのでこれからも応援よろしくお願いします。

橋本美桜 コメント

 本日はお越しいただきありがとうございます。今年は環境が変わることが多くて、ファンにみなさんと会えなかったりメンバとの別れもあったんですけど、浜辺ゆりなちゃんという素敵な新メンバーが入って来てくれて、白キャンがやったことない合宿というのもチャレンジしてZeppに向けて一致団結したのが大きかったです。

 たまに仲が良いけど難しい所があって、ここのフリ合わないよねとかいろいろあるんですけど、今回のライブでより一層仲良くなってめちゃくちゃ言い合えるようになったし居心地の良いグループになりました。

 そういうことが嬉しくて、4年目もまだまだ楽しみなことが沢山あるんだなと希望が持てたのでこれからも頑張っていくのでみなさんよろしくお願いいたします。

三浦菜々子 コメント

 本日はお越しいただきありがとうございます。3年目はメジャーデビューさせていただいて、それによって色々なたくさん今まで経験したことないメディアに出させていただいたりとか経験したことがないことをたくさんさせていただいて、メンバーとの別れ卒業もあって凄い環境が変わった3年目だったと思います。

 私は変化についていくのがすごい苦手で上手く笑えない時期があったり、ライブ中自信がなくてみんなの顔が見れななったり下ばっかり向いちゃってライブ終わってすごく反省することとか沢山あって、それでも個性の強いメンバーの中で一番普通だね、常識があるねと言われる役なのでしっかりしてないといけないなと自分を苦しめてしまってメンバーに悩んでいることとか弱音を言えなくてメンバーといる時間が自分を作っている気がしてすごくしんどくなっしまった時期もありました。

 でも、合宿をやって少しづつみんなと本音で向き合えるようになって、うまくいかないこともあるんですけどすぐに自分も変われないし、メンバーも変われないけど少しづつお互いに歩み寄ってみなさんとも一緒に共に4年目も駆け抜けていきたいなと思いました。

 真っ白なキャンバスと一緒に4年目も皆さん応援をよろしくお願いします。

小野寺梓コメント

 3周年記念ライブありがとうございます。あずさも新しい体制を毎回受け入れるのがなんかあれで初期メンも一人になって受け入れられなかった自分がいたんですけど、今回この3周年にむけて一つになれてもっとこのグループが好きになりました。

 あずさはダメなところがいっぱいあるけど、関係者の方も運営もファンの皆さんもすごく支えてくれて本当にありがとうございます。 Zeppは結成した時から目標にあって、入ったときにプロデューサーが真っ白なキャンバスの年表を描いた中に目標にあって、その時はZeppでも無理だと思っていたんですけど今日こうして立っていて本当に本当に嬉しいです。

 でも、その年表にはもっと未来があって、まだまだ叶えたいことが沢山あるのでこれからも応援よろしくお願いします。

2020年11月18日(水)ZeppDiverCity「君と生きる」セットリスト

0.SE 
1.アイデンティティ 
2.闘う門には幸来たる 
3.パーサヴィア
4.共に描く 
5.白祭 
6.全身全霊 
7.セルフエスティーム 
8.Whatever happens,happens. 
9.untune 
10.清涼飲料水 
11.らしさとidol 
12.ルーザーガール 
13.My fake world 
14.モノクローム 
15.HAPPY HAPPY TOMORROW 
16.いま踏み出せ夏 
17.SHOUT 
18.自由帳

 〜アンコール〜 
19.桜色カメラロール 
20.ダンスインザライン 
21.PART-TIME DREAMER

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