2026年2月26日(日)Veats SHIBUYAにて『パレちゃレ!2 FINAL』公演が開催された。
本公演は2022年9月3日(土)に行われたPalette Parade1周年ライブ『ファンファーレ』にてその実施が発表され、5ヵ月に渡ってメンバーが様々なチャレンジに挑戦した『パレちゃレ!2』シリーズの最後を締めくくるもの。
2月26日のライブの3日前の23日にはパレちゃレ2を締めくくる最後のチャレンジである「広島から東京まで1000kmを自転車走破するチャレンジ」を終えたばかり。
その感動の余韻そのままに、様々な試練を乗り越えて一回り成長したメンバーの姿を見届けようと、多くのファンが詰めかけ会場を埋め尽くしていた。
SEが始まるとメンバーが入場。前日に公開された新曲『gemmy day』のMVにて登場した新衣装は各々のメンバー毎に異なった凝った作りになっており、新たな魅力を見せたメンバーの姿に会場が沸く。
ライブの皮切りとなる1曲目は『起きて笑おう果報者』。イントロ部分で「始まりましたパレちゃレ2!ファイナル。今日は超楽しくて超熱い日にしましょう」と白川千尋がこの瞬間を待ちきれなかったという思いをほとばしらせながら観客を煽り、ライブはスタートした。
本曲『起きて笑おう果報者』は1stワンマン『私たちがパレットパレードです。』にて初披露されたもの。曲間には客席がウェーブを起こすパートがあるなど、今やファンと一体になって楽しめる曲としてすっかり定着。
パレパレの勢い担当の葵うた、元気印の白川千尋がウェーブを巻き起こすと会場のテンションは序盤から一気に加速した。
2曲目は『スタートライン』
「みなさんまだまだ踊れますか?もっとクラップ聞かせてください」と白川千尋がここでも煽ると、コールが解禁となった会場からはさらに大きな歓声が上がる。
本日のライブは自転車チャレンジにてメンバーの緋本はぐみが足を痛めてしまったため残念ながらライブには部分参加。一人でステージの空気を換えてしまえる唯一無二の個性の持ち主でありパレパレの世界観に深い彩を加える存在。
そんな緋本はぐみの不在はパレパレにとっては大きな危機であったが、これを救ったのが森月音羽だ。
本公演で森月は緋本の歌唱パートを代理でカバーすることが多かったのだが、曲のターニングポイントなる難しい個所をそのピュアな声の魅力を最大限生かし曲の世界を展開する。
そんな彼女の元気いっぱいのダンス、そして歌声での奮闘に応えるかのように、会場には一際大きな歓声が上がる。
3曲目は『可愛くなる』
比嘉ゆめのと葵うたのパレパレの二大ボーカルの共演からスタートする本曲。ここで存在感を見せつけたのがメインの2人とはまた違った方向性でボーカルの魅力を放つ中野小陽だ。
パレパレ楽曲はそのほとんどを古屋葵氏が手掛けているが、本曲はUPER氏によるものでありパレパレ楽曲の中では少し雰囲気の異なる1曲。
中野小陽はそんな本曲の中で彼女の持つ大人な魅力を生かし、楽曲に艶やかさを与える。
それは中野の外見的な美しさや繊細でしなやかな手先の動きといったテクニカルな部分だけではなく、ダンスに苦労しながらも見えない部分でも努力を重ねてきた彼女だからこそ出せる魅力なのかもしれない。
『可愛くなる』の後はMCに突入。緋本はぐみがステージに登場すると会場から歓声があがったのは、パレパレファンの優しさを感じる一場面であった。
それは、パレちゃレの様々な企画にてファンと一緒に駆け抜けてきたこのグループならではの空気感であるように思う。
4曲目は『明日の私は主人公』
比嘉ゆめのが「みなさんまだまだまだ盛り上がれますよね。ファイナル一緒に楽しみましょう。」と会場を煽り、ステージの盛り上がりを再点火させる。
白川千尋のはじける笑顔、森月音羽のキュートなダンスが楽曲の盛り上がりに華を添える。
5曲目は『PARADE』
パレパレ初のシングルである本曲は激動の昨年の夏を思い出させるファンにとっても感慨深い1曲。
ダンスの動きの多い本曲は普段の6名とは異なった5人でのフォーメーションへの対応にメンバーの苦労が感じられる場面もあったがパレパレの持ち前のパワーで乗り越える。
後半の台詞のパートでは緋本はぐみの台詞を担当したメンバーが詰まる場面があり、その後に続くメンバーつられてしまい失敗の連鎖が続きそうになるが、比嘉ゆめのが機転を効かせて台詞を歌いカバーするファインプレイ。
自分が担当していないパート、そして極めてイレギュラーな場面でも即座に対応できる比嘉ゆめののライブへの極めて高い集中力は賞賛すべきもの。本場面に限らずであるが、彼女のライブ全般におけるスキルと貢献度はグループを支えていると感じた瞬間であった。
また、その後を担った中野小陽が自らのパートをきっちりと果たし崩れそうな流れを立て直す。そんな彼女のオールラウンダーな仕事師ぶりも特筆すべきもの。
そんなグループとしてのチームワークも感じさせながら、ライブは中盤に差し掛かっていく。
6曲目は『スプラッシュアンカー』
本曲はパレパレのデビュー時に披露された曲のひとつであり、メンバーの成長ぶりを感じさせてくれる楽曲でもある。
パレパレは一緒に前に進んで行くというコンセプトを持ったグループであり、楽曲もその流れを汲んだものが多い。そんなグループのコンセプトを体現するのがパレパレの”にこにこヒロイン”こと白川千尋だ。
白川はグループの最年少であるがMC回しを担当することが多く、またそのエネルギッシュなダンスと楽曲にリンクされた感情を余すことなく伝える表現力はパレパレのステージの見どころのひとつ。
時に豊かすぎる感情は、楽曲の世界に入り込みすぎてしまう時もあるがそれは今しか味わうことの出来ない青春そのものの輝きのようで魅力的に映る。
それは普段は悩みなどないかのように元気にはしゃいでいても、人一倍繊細でメンバーの変化にいち早く気付いたり誰かを気遣わずにはいられない、そんな彼女の人柄があってこそ表現できる世界であるように思う。
今日、挫けてしまうことがあっても、明日にはきっと前を向いて進んでいる。そんな彼女が「苦しいことも君と共に乗り越えよう」と歌うからこそ、その笑顔は誰かを勇気づけるのだ。
7曲目は『Bad Genius』
本曲はパレちゃレ2の企画でメンバーがMV撮影の全てを手掛けている。中でも緋本はぐみがカメラや編集を手掛けており、その類まれなるセンスには脱帽するばかりだ。
MVでのメンバーの可愛さにカモフラージュされているものの本曲はパレパレの中でも特に難解なメロディーを持つ楽曲であり、『歌唱力が生きるような難しい曲を制作せよ』という青木プロデューサーからの依頼があったと作曲の古屋葵氏は語っている。
そんな本曲で高い実力を見せつけるのが、今やパレパレのエースとして飛躍を見せる比嘉ゆめのだ。
彼女の特徴は、主旋律でも副旋律もメロディを支える確実な歌唱力、深い楽曲理解度、そしてレスなどでファンを盛り上げるステージング力に加えてSNSでも話題を提供できる、そのアイドルとしての高い総合力だ。
しかしながら、彼女は最初からそれを兼ね備えていた訳ではない。一年半前はギリギリでオーディション合格を果たしたただの女の子。
葵うたは歌の天才、白川千尋は感情表現の天才。その二人と通称パレパレハウスにて同居している比嘉は初期から音楽的な素養は見せていたものの決して”天才”と呼べるような存在ではなかった。
アイドルは華やかなように見えて、誰かに無責任に批評され、そして常にだれかと比較される残酷な存在でもある。
本曲「Bad Genius」では誰よりも自らの無力さを感じていた彼女の叫びのような歌声が心に深く刺さるのは、おそらく私だけではあるまい。
そんな彼女はライブでの達成感を感じながらも決して満足することはない。「ああすればよかった、もっと出来た。」と次への課題を見つける。そして、そんな日々の研究の積み重ねが彼女をグループを背負うアイドルにしたのだ。
2年目のパレパレは今が正に勝負の年。でも比嘉ゆめのがいれば何の心配もない。アイドルとして一人前になった姿、そして彼女が背負うエースとしての覚悟に期待せずにはいられないから。
曲の後はMCに入り、パレちゃレ2にて達成した各種のチャレンジのフリップを持って振り返る。ビラ配りから始まり、MV作成、ときしゅわの作詞、TikTokチャレンジに直前の自転車チャレンジとこの5か月間の足跡はファンにとってもかけがえのない時間だ。
MC後の8曲目は新曲『gemmy day』が初披露。
本曲は緋本はぐみが作詞を行っており、各々のメンバーのキャラクターに合わせて書かれた歌詞は評価が高い。それなのに、楽曲の制作スケジュールの都合上、依頼がきてからわずか一日で書き上げたというからそのセンスには驚かされるばかりだ。
そんな本曲の初披露とあって、パレちゃレの自転車企画で残念ながら足を痛めてしまいこれまでライブに登場していなかった彼女も参加。
足の踏ん張りがきかず、思うようにならない歯がゆさを随所に感じさせながらも、痛みを抱えながらも最後まで見事にパフォーマンスをやり遂げた彼女には惜しみない拍手を送りたい。
そんな彼女は終演後の特典会で復帰までには少し時間がかかると、いつものように微笑みながら、そして初めて見る顔で寂しそうに述べていた。
しかし、本日のライブを見て彼女しか持ちえないその独自の存在感の大きさを改めて感じさせられた。決して無理はして欲しくはないが、グループのためにも早い復帰を切に望む。
9曲目は『ときしゅわ』
パレちゃレのTikTok企画でファンと一緒に踊った本曲は、ファン各々の思い出も相まって会場の熱をまた一段と高める。そしてライブは終盤へと差し掛かっていく。
10曲目は『シャイガール』
パレパレ一番のキラーチューンの登場でメンバーもファンは一段とギアを上げ、クライマックスに向けて突き進んでいく。
各々のメンバーが全てを出し切るパフォーマンスを披露する中で、葵うたはそのスーパーボーカルを炸裂させる。
彼女はふだんはコミカルな面を前面に出しているが、歌うことに関しては真剣そのもの。どんな会場でも、どんな環境でも、私は彼女が出し惜しみをしてるのを見たことはない。
全ての力を込めて歌に魂を刻む。だから彼女の声は心の奥底にまで響くのだろう。今までも、そしてこれからも。
11曲目は『フレフレ』
パレパレを代表する応援ソングで、会場は一体となる。そしてライブ本編は終了した。
ライブ後のMC白川千尋は次のように述べており、楽しくもメンバーにとって本当に過酷なチャレンジであったことを伺わせた
白川千尋コメント
パレちゃレもう終わっちゃったんですけど、この5か月間、自転車とか何だこれというチャレンジもあって正直心が折れそうになったり、何でなんでと悲しくなったりもしてたんですけど。今日もそうだし、泣きそう(声を震わせて泣きそうになる)。
本当にみんなが居てくれて、私も毎日救われていて、みんながいてくれたからチャレンジを達成できたと思います。応援してくれてありがとうございました。
パレちゃレ2の自転車チャレンジについてはライブの直前に行われた事。そして、緋本はぐみが過去の事故のトラウマにより自転車に乗れなかったため、室内でのエアロバイクに切り替えたものの結果的にケガをしてしまった事もあり様々な議論を巻き起こした。
6人全員が揃ってのライブを届けられなかったという点において、運営側の批判は免れない。
しかしながら、コロナ禍を終えあらたな局面を迎えたアイドル業界において、注目を得るためにはギリギリを攻めなくてはならないというのは分からなくはない。
一部ではあるが自転車チャレンジに立ち会った身としては、メンバーだけではなくそれを支えるプロデューサーもスタッフも過酷な日程の中でメンバーの魅力を伝えようと尽くした結果であるというのが痛いほどに伝わってきて、個人としては責める気にはならないのもまた正直な感想である。
誰しもが手放しで認める大成功ではなかったのかもしれない。しかし困難に向かってメンバーもスタッフもファンも関わる人全員で全力でチャレンジをした。私はそこに意味があるのだと思うのだ。
今回のライブは自転車での疲労、そして直前で5人編成となってしまったことからライブ全体の完成度としては最高であったとは言い切れない面もある。しかしながら、逆説的にはそんな事態においてもライブを成立させた彼女たちのパフォーマンススキルの確かな進化を見せつけることとなった。
メンバーにとっては厳しい条件下ではあったものの、それを言い訳にすることなく全員でカバーした気迫は強い感動を与えてくれた。それが全てではなかろうか。心に確かなものを残す、素晴らしいライブであった。
この日、パレパレの歴史を語る上で外せない楽曲である『わたしトレイン』、『Life is Dramatic』の2曲は披露されなかった。
それは”6人そろってパレパレである”という、運営側からの強いメッセージであるように私は感じた。
ライブの最後には全国5都市をめぐるツアーの開催が発表された。6人全員そろってどのようなステージを作り上げるのだろうか。彼女たちの真価は4月からは始まる全国ツアーで確認したい。
そう、止まらずに前に進んで行くパレパレからはまだまだ目が離せそうにない。
パレちゃレ!2ファイナル セットリスト
1.起きて笑おう果報者
2.スタートライン
3.可愛くなる
4.明日の私は主人公
5.PARADE
6.スプラッシュアンカー
7.Bad Genius
8.gemmy day
9.ときしゅわ
10.シャイガール
11.フレフレ