2023年9月5日にPalette Parade2周年ライブ『Pa Pa March』がSpotify O-EASTにて開催された。
O-EASTといえば最大1300名のキャパシティーを誇る都内でも屈指のライブ会場。もちろんパレパレとして史上最大規模の会場でのライブとなる。
O-EASTは出来てから30年を超える誰しもが知る都内屈指の会場だ。そしてそんなO-EASTはアイドルだけではなくアーティストにとっても夢として目標に挙げられることも多い。
しかしながら、その一方で夢叶わず、道半ばで散っていったグループは数えきれない。ここに立てるグループのほうが少ないのは残酷な事実であろう。
パレパレはメンバー全員が華やかなヴィジュアルを持っていることに加え、パフォーマンスの成長力もある。これからも伸びていくのは間違いのないグループだ。
”だが、まだ早い”それが『全国ツアー2023 とびだせ! パレパレ大行進』にて発表された時の私の正直な感想であった。
私自身はパレパレの熱心なファンである。 グループとしての飛躍を喜ばしく思う一方で、O-EASTという大会場を満員にすることが出来るのだろうか。しかも夏休みが終わった平日の火曜日という日だ。 それは私だけではなく、 多くのファンが口にはせずとも少なからず思っていたことではなかろうか。
だが、そんな私の考えなど全くの杞憂であったことを開演前の前特典会の時点で知る。余裕を持って会場に到着した私を待ち受けていたのは平日の昼間だとは思えないくらいの人だかりであった。
入場口の階段前にはメンバー個別のフラッグ、そしてフラワースタンド、バルーンオブジェなどが飾られており、会場の中に入る前から気持ちを高めてくれる。
前特典でのメンバー達は大会場でのライブを前にしていても、いい意味で普段と変わらない明るさを見せる。だが、その目の奥には確かな覚悟が伺える、いい緊張感だ。そんな彼女たちの成長ぶりを嬉しく、そして頼もしく感じながら、開場の時を静かに待つ。
開場が近づくと仕事や学校を終えた者達が続々と会場に到着する。 そこには普段パレパレのライブではあまり見かける見ない他のアイドルのファンも多数駆け付けていた。
また、関係者席には同業者のアイドルも多数来場。本日の2周年という記念の日への期待の大きさを改めて知る。開演直前にはフロアは満員の観客で埋め尽くされていた。
開演時間となりステージ前面のモニターが光を放つ。モニターには過去のアーティスト写真とMVの名シーンがメンバーごとに抽出され、編集された特別映像が流れる。 今年新しくなったSEはよりラディカルに会場の勢いを加速させる。
ステージに新衣装に身を包んだメンバーの姿が浮かび上がる。
白川千尋が「パレパレEAST来たぞ~。今日は最高の一日にしましょう!」と溢れんばかりの気迫を込めてコメントし、ライブはスタートした。
1曲目は 『スタートライン』 パレパレの始まりの曲といえばやはりこの曲しかない。 それは小細工なしで真っ向勝負をかけるぞという決意表明でもある。
本日を迎えるにあたってファンとしても相当の気合いを入れてきたつもりであったが、それでもメンバーの気迫に圧倒される。
メンバーは語らずとも、「まだまだ足りない。もっともっと歓声を!」と言わんばかりの全力のパフォーマンスで全身で訴えかけてくる。
2曲目は『スプラッシュアンカー』。MVがプールで撮影されたこともあって夏を感じさせる1曲だ。
最初期のMVで見せる、メンバーの初々しい姿も新鮮で良いものだが、今の成長を遂げた彼女たちが表現するとまるで別の曲であるかのようにその存在感は増すばかりだ。
比嘉ゆめのが「夢の麓まで一直線走る」と定番のフレーズを目を細めて楽しそうに歌い上げる。
メンバーが考案し編集まで行ったライブに向けての楽曲の振り付け講座の効果もあって、サビでは会場が一体となってフリコピが行われたのも壮観だ。
3曲目は『心羽根模様』
近年の対バンでの披露は少なくなったもの、根強い人気を誇る楽曲のひとつだ。
森月音羽が自身のキャッチフレーズになぞらえ「元気もりもりしますか〜」と曲の冒頭で煽りを入れる。 そして曲中では森月が見せ場のソロダンスを決めるとファンからは待ってましたとばかりに大歓声が上がる。彼女にしか出せない綺麗でキュートなダンスはやはり良いものだ。
曲の後は最初のMCに突入。メンバーの自己紹介ではファンがそれぞれの推しに対して声が枯れんばかりの歓声を送る。
白川千尋が「今日は人生楽しんだもの勝ちなので。今日はEASTですよ、もっともっと楽しんでいきましょう」と述べ、4曲目として新曲「Brand New, Brand New Days!!』 が初披露。
多才で目まぐるしく変化するフォーメーションは曲の躍動感をより一層高めてくれる。難しい曲であるが、初披露であってもそれを感じさせない完成度はグループとしての確かな成長を感じさせる。
ラストのサビ部分ではスモーク入りのシャボン玉が飛ぶ演出もあり、 会場は幻想的な雰囲気に包まれる。そして後ほど判明するのだか、ここから怒涛の8曲ノンストップ披露の序章となった。
5曲目は『明日の私は主人公』
中野小陽が冒頭の「明日もこの先もパレパレはみんなの主人公。今日は最高のテンションで楽しんでいきましょう」と煽りを入れる。
お嬢様的なキャラクターを持つ中野が普段のライブにおいて煽りを入れることはあまりないが、 この大一番で見せた彼女の新たな姿は歌やダンスにおいて目覚ましい成長を遂げている彼女の更なる進化を十二分に予感させるものであった。
6曲目は 『可愛くなる』
序盤の5曲で会場を十分に温めた後に入れてくる変化。 情感たっぷりに歌い上げる彼女たちが作 り上げる世界にさらに引き込まれていく。
7曲目は 『Bad Genius』
本曲はパレちゃレ!2 PART1 にて初披露され、その企画にてメンバーがMVを作成したものである。
パレパレはメンバー全員が品の良さを感じさせるのが特徴のひとつであるが、そんな彼女たちの優等生的なイメージを突き破るきっかけとなった本曲はファンからの評価も高い。
だが、この曲が産まれたときのパレパレの状況は決して順調と言えるものではなかった。
一年前に行われ満員御礼で大成功だった1周年ライブ『ファンファーレ』。その勢いをかって始まったパレちゃレ2。
会場となったO-nestではキャパが足りないのではないかという当初の予想に反して、パレちゃレ2のチケットは一度も完売しなかった。
メンバーに慢心があったわけでは無い。一年間の積み重ねを経てパフォーマンス力はさらに進化。そして個々のアイドルとしての魅力もますます強く輝きを放っていたのはファンのひいき目を抜きにしても明らかであった。
デビュー直後の俗に言われるボーナスタイムを終えたあとにアイドルに訪れる”停滞”の期間。それはパレパレにとっても例外ではなかった。
いや、真っ白なキャンバスの妹分グループとして他よりも恵まれたスタートを切ったパレパレだからその反動はより強烈なものであったとも言える。
そしてその悪い流れはパレちゃレ2!FINALにおいても続く。直前に行われた”1000km自転車チャレンジ”の企画では緋本はぐみが負傷。1曲を除きライブを欠席することとなった。
メンバーのライブにかける強い想いは伝わってくるもの、直前で5人編成となったことの影響や、ライブと同週に行われた”1000km自転車チャレンジ”でのダメージでパフォーマンスに身体がついてこないのが手に取ってわかるなど、メンバーにとってもファンにとっても完全燃焼とはいえない結果となった。
2年目のジンクスで消えていくアイドルは多い。パレパレもこのまま・・・と立ち込めた暗雲を振り払ったのは白川千尋の存在であったように私は思う。
白川はパレちゃレ2!FINALの後にTikTokの毎日更新を始めた。それは翌3月末に行われる自身の生誕祭を盛り上げるため、そしてグループのために何かをしようという想いが結実したものであった。
(※なお彼女は2周年ライブに向けても「ちたん日記」という企画を毎日行った)
そんな白川の生誕祭は満員の会場で大盛況。セットリストや演出など考え抜かれた構成、そして何よりもファンを楽しませようという純粋な想いに溢れたライブはアイドルの原点となる部分を強く感じさせるものであった。
パレパレの潮目が変わってきたのはこの時期くらいからであろうか。
4月から6月にかけて行われた全国ツアー『とびだせ! パレパレ大行進』は
葵うたの地元である広島から開始。パレパレとして初めて訪れる大阪以西の土地でのライブであったが多数の観客に恵まれ幸先のよいスタートを切る。
その後に続いた名古屋、白川千尋と中野小陽の地元の福岡、大阪とツアーを重ねる毎に勢いを増すだけではなく、グループとしての全体のパフォーマンスも見違えるほどの進化を遂げる。
そしてラストとなる東京ではメンバーが目標に掲げていた新宿BLAZEにてのライブで誰しもが成功だと認める大団円のフィナーレを飾った。
白川は自らのキャッチフレーズで”にこにこヒロイン”と呼ぶように笑顔が印象的なキャラクターである。そしてその明るさと前向きさはパレパレというグループの象徴であると言っても良い。
いつでも笑顔の白川であるが、彼女は何でもこなせる器用なタイプではなく、またその若さも相まって決して強くはない。
でも、不器用でも楽しそうにがむしゃらに生きる。そして目の前の人を幸せにしようとする、そんな彼女の生き方は確かな勇気を与えてくれるのだ。
これから先もパレパレには様々な困難が押し寄せるであろう。でも、どんな暗雲が立ちこめても心配する必要はないのかもしれない。
だって僕たちにはいつでも幸せをくれる”にこにこヒロイン”そして、ピンチの際には颯爽と現れて笑顔を与えてくれる”無敵のヒロイン”白川千尋がいるのだから。
8曲目はこの日2つ目の新曲となる『未来図』が披露。
冒頭で葵うたが語る。
「アイドルになる前私は何かに向き合おう事を避けてきた人生でした。でもO-EAST6人でここまでこれた。 パレパレに入って自分の心と向き合うことの大切さを知りました。自分の夢は自分でつかみ取りたいって思うようになった。私はここで沢山夢を叶えたい。この想いが届きますように。未来図」
これまでの記憶が走馬灯のように駆け抜けたのであろうか。こみ上げる想いを抑えきれずメンバーの身体が小刻みに震え、中野小陽は思わずこらえきれず泣きだす。
葵うたのロングトーンで曲が始まると、あふれ出す感情のありったけをパフォーマンスに注ぎ込む。そこには青春をすべて注ぎ込んだ者のみが放つことが出来るまばゆい光があった。
パレパレは表向きの華やかなイメージとは裏腹に強烈なメッセージ性を帯びた楽曲が多い。そしてそれらの楽曲に説得力を持たせるのが、葵うたという存在だ。
葵は普段は愉快で笑いのポイントを外さない面白いキャラクターである。そんな彼女であるが歌に対しては真剣そのもの。そしてその内面に抱えた繊細さは彼女の歌の世界をより深く誘ってくれるのだ。
そんな葵は今年の夏のTIF2023 ステージ企画「IDOL SUMMER JAMBOREE」にてアコースティックにてNEOJAPONISMの滝沢ひなのとTHE YELLOW MONKEYの『JAM』を披露し大好評を博した。
本企画は近年商業主義を強くするTIFの中にあってもアイドルの”実力”のみで選ばれる企画。現在のライブアイドルシーンにおいてトップクラスの歌唱力と評価されている滝沢ひなのとデビュー2年に満たない葵が組むのは衝撃であった。
しかしそれは決して過大評価ではない。パレパレのライブを初めて見る者が一番最初にその存在を認識するのはおそらく彼女であろう。それは卓越した歌唱力だけではなく、その全身で曲を表現する高い熱量があるからだ。
すべてのライブにおいて完全燃焼する葵うたは、歌に魂を刻む。だからこそ、パレパレの歌は生命を帯びて、その歌詞は説得力を持つのだろう。
2周年の節目に登場した『未来図』はその歌詞に込められた感情もさることながら、メンバーのコーラスにおける音楽的なスキルの向上も見所となっている。
これからどのような成長を遂げていくのか、その未来は予測できないけれども3年目、4年目と高く羽ばたいていくであろう彼女たちに期待は高まるばかりだ。
9曲目は『ときしゅわ!』
冒頭のセリフパートで森月音羽は「EASTきたぞー」とこの日のスペシャルバージョンで会場を盛り上げる。
Bad Geniusから未来図ときて感傷が最大限に高まったところで、遊び心があるこの曲を持ってくることが出来るのが今のパレパレの強みであろう。
そしてこの何でもありな変幻自在な流れを成立させてしまうのが、森月音羽という存在であろう。
2年間パレパレのファンをしているが森月には謎が多い。それは、彼女の持つ独特で、そしてどこまでも深い優しさが大いに関与しているように思う。
森月は自ら率先して前に出るキャラクターではなくどちらかといえば控えめなイメージがある。でも、毎回のライブのセットリストをあげたり、予定表を作成したりなどきっちりと仕事をこなす。
それはステージの上においても同様でひとつひとつの動作が丁寧で綺麗なダンスを繰り出す。そしてキレがあるのにデビュー時と変わらない緩やかな可愛さまで兼ね備えているのは何だかちょっぴりチートだ。
そして彼女はライブ中におけるレスを含めたファンとのコミュニケーションが抜群に上手い。流れの中でごく自然にそれをやっているのは、幾重にも自身のライブの復習を行っているのは想像に難くない。
すごく真面目で努力家なんだけれども、本人に全くその自覚がないところに彼女の奥深い魅力が内包されているように思う。
見れば見るほど気になる存在。そんな彼女の謎を解き明かす日は来るのだろうか。私は気付けば彼女の一挙手一投足を追ってしまっている。
10曲目は『Life is Dramatic』
合格発表前夜の様子が歌詞に描かれた本曲は節目のライブではやはり外すことは出来ない名曲であり、メンバーの成長の歴史を辿る曲でもある。
開始時にセンターの位置で座る比嘉ゆめのは、今やその場に居るだけでアイドルのオーラを感じさせるように。
白川千尋はダンスに加えて今や歌唱力でも見せどころを作り、曲の物語を色濃く描く。
緋本はぐみはその声の魅力と唯一無二の存在感をより強く。
森月音羽は流麗なダンスに加えて、ふとした時に見せる微笑みで救いを与える。
葵うたは圧倒的な表現力をさらに磨き上げ、パレパレの世界を積み上げていく。
そして、本節で取り上げる中野小陽はその中でも特筆すべき成長を遂げたメンバーである。
中野は本人も語っているようにダンスが苦手で苦労をしたメンバーである。歌唱面や表現力においては当初から実力を発揮していたものの、なかなか上達しないダンススキルに関しては厳しい目が向けられたことが無かったわけでは無い。
中野のパフォーマンスはその育ちの良さを感じさせる手先の繊細でしなやかか動きに美しさを感じさせる。そしてその繊細さと相まった美しさは歌唱時にも反映され、大人な表情の魅力を発揮してくれる。
そこには単に整った顔の造形的だけではなく、苦手なことから向き合い乗り越えたそんな強さがあるからこそ美しさがより一層引き立つのであろう。
この2年間の蓄積を経て、今の中野のパフォーマンスは大きく花開く前の予感を感じさせる。より感情が込められた歌唱、多彩な表情、そしてしなやかなダンス。パレパレの更なる躍進には彼女の力がますます必要となってくるであろう。
11曲目は『シャイガール』
8曲連続披露の最後を飾るのは今やパレパレの代名詞ともなったこのナンバー。間違いなく本ライブのクライマックスとなる瞬間。
スポットライトに照らされた葵うたがアカペラでの曲の冒頭を歌い、客席のファンのボルテージは彼女の心に呼応して怒涛の勢いで加速していく。
そのライブがどれだけ印象に残るかにおいて、技術的な面がある程度担保されているのは必要用条件であるが、それ以上に重要なのはどれほどの想いが込められているかであると私は考えている。
大サビで葵うたが命を燃やし尽くすかのような熱で歌に魂を刻む、その横で白川千尋は内に抱える挫折、葛藤、未来への意志、そして前に進む勇気の全てを踊りだけで観客に突き付ける。2人の天才が織りなすこの場面は何度見ても身震いがする。
そして続くラスサビではユニゾンで各メンバーがそれぞれの感情を爆発させる。抑えきれない想い、メンバーはありったけの力を込めてダンスを踊る。それは私がパレパレのライブで最も美しいと思う瞬間である。
そして各々のメンバーの限界を越えんとするパフォーマンスの揺らぎを受け止めるのは比嘉ゆめののボーカルだ。
比嘉の歌唱はそこに強い想いを込めながらも、高い技術力でメロディーラインを崩すことなくあり続ける。そしてそんな彼女の声があるからこそ、メンバーは億すことなく自らの最大限の表現をすることが出来るのであろう。
どこまでも伸びやかな葵うたが空のようであれば、比嘉ゆめののボーカルはすべてを包み込む海のよう。そこに凛とした美しさを見せる花のような中野小陽がいて、緋本はぐみは水のようにしとやかに染み渡る。森月音羽は空気のように優しさを与え、白川千尋は太陽のようにすべてを照らす。
誰一人かけても成り立たないパレパレの世界、光も闇をその総てを抱えて進む者たちの尊さを知る。
8曲ノンストップ披露を終えてMCでひと休憩。迫真のパフォーマンスの直後でもメンバーはいつものようにゆるやか。ステージの格好良さと普段の可愛さとのギャップもパレパレの魅力のひとつであろう。
12曲目は『起きて笑おう果報者』、13曲目は『UKIYO-YO ONDO 』と勢いのある楽曲が続く。
パレパレはコロナの中でデビューしたグループである。 先輩である真っ白なキャンバスが2022年7月に河口湖ステラシアターで声出しを解禁し、その後アイ ドル界に広がっていった
しかしながら、最初からの声出しの文化を持たないパレパレレはこれまでとは全く異なるアプローチを求められる時代の移り変わりに苦労することとなる。
だが、プロデューサーの青木勇斗はそれを見越していたかのように昨年6月に『起きて笑おう果報者』をシングルのカップリングで投入。
一年間をかけてフロアで遊べる文化を構築すると、今年の6月には『UKIYO-YO ONDO』をさらに投入。時代を読み切った青木のプロデュースカには脱帽させられるばかりだ。
『起きて笑おう果報者』では全員を巻き込んでウェーブが巻き起こり、『UKIYO-YO ONDO』では会場のいたるところで盆踊りの輪ができる。
なんでもありのお祭り騒ぎ。でもその自由で沸く中にあってもフロアには秩序はある。これもパレパレの持つ大きな魅力だ。
14曲目は『フレフレ』。先の2曲で温められたフロアの勢いはとどまることを知らない。
今となっては完全に定着したメンバーへのコールの嵐が吹き荒れる。コロナの時期は完全に過ぎ去り新たな時代が始まる。メンバーの弾ける笑顔はそう思わせるのに十分であった。
本編ラストとなる15曲目は『アイビー』
比嘉ゆめのは曲の照会と共にファンへの感謝を述べる。
「今日は来ていただき本当にありがとうございました。最高に素敵な時間になりました。次の曲、最後です。聞いてください。アイビー。」
本曲の初披露は6月の全国ツアーファイナルであり登場間もない。しかしながら公開直後からその等身大の歌詞が共感を呼び、既にパレパレには欠かせない楽曲となりつつある。
作詞を行ったのは比嘉ゆめのは今やSNSの総フォロワー数は10万人を超える人気を誇るパレパレのエースだ。
比嘉は今となっては信じられない話だが、パレパレの配信オーディションの初日は最下位グループからのスタート。最終審査では当落線上からギリギリで合格を果たしたメンバーであった。
アイドルを夢見ていただけの少女が人生で一度だけと決めて受けたオーディション。誰もファンのいないフォロワー0人の状態からスタートした比嘉がアイドルとしてステージに立ったのは、奇跡のシンデレラストーリである。
そんな比嘉はグループに加入してから、その高い歌唱力、透明感のあるヴィジュアル、そしてトータルレベルの高いパフォーマンスで高いアイドル力を見せつけると共にステージ以外の分野でもオールラウンダーな活躍を見せる。
パレパレはまさに天才と言った激情型のパフォーマンスを繰り出す白川千尋と葵うたを筆頭に、緋本はぐみ、中野小陽、森月音羽も各々の個性を理解し最大限にに生かした一芸に秀でたタイプが多い。
その中でオールラウンダーな性質を持つ比嘉は「自分だけの武器がない」と悩みを吐露することがあった。
実際には歌唱面だけをとっても洗練された呼吸から発声までの動作により高音域だけでなく中低音域まで澄み切った歌声。どんな歌詞を歌っているのか容易に判別出来る一音一音の語感まで考慮されつくされた発声。ハもりなどの主旋律以外を歌う時でも一切乱れることのない音感など枚挙にいとまがない。
それに加えてダンスフォーメーションの中でごく自然に目を合わせる1級品のレス。これは彼女の飽くなきアイドル研究の賜物である。求められるすべての事を高いレベルで実現する彼女の存在はそれそのものが武器であるのだ。
だが比嘉はそんなファンの言葉を”今は”受け入れることはしない。それは彼女が求める理想のアイドルになるには、まだまだ自身の力が足りないと自覚しているからだ。彼女が目指すものは遥か先にある。
夢を語る人間はこの世に溢れかえっている。 でも、そこに然るべき才能を備え、説得力のある行動を伴って、そして溢れる情熱を持って道を示せる人間はほとんどいない。
比嘉は今日も自らの夢を語る。そしていつの日か必ず叶える。それはただの願望ではなく、彼女が自らの歩みでもって証明してきた道でもある。
そして我々ファンは何があっても決して歩みを止めない彼女が語るからこそ、その夢を共に追うことが出来るのだ。そうなのだ、彼女の最大の武器はファンに確かな夢を見させる力なのだ。
泣きながら微笑む、そんな彼女が歌うこの日のアイビーは深くそれは深く、私の心にしみわたった。
本編が終了すると、会場のファンはあてられた熱量の行き場を探すようにアンコールを始める。メンバーに感謝を示すかのような大歓声のアンコールの声援は鳴りやまない。
やがて2周年グッズのTシャツに着替えたメンバーが登場すると、開場には一段と大きな歓声が轟いた。
アンコールのはじまりとなる16曲目は『PARADE』。
開始から相当の時間が経過しているにも関わらず、疲れなど一切見せずにされにライブを加速させる。
この日はパレパレとして公表されている全曲を披露したのが、 それは体力面は最後まで集中を切らさないメンバーの成長あってのものであろう。
17曲目は『 わたしトレイン』
パレパレのはじまりの曲である『わたしトレイン』はライブの終焉を感じさせる曲でもある。
まだまだこの素晴らしい時が終わらないでくれと会場の全員が願う。
最後のMCではメンバー各々が本日の感想を述べる。
白川千尋がラストの曲に向けて言葉を紡ぐ。
「こんな素敵な場所O-EASTをこの6人で立つのは今日で最後になってしまうんですけど、この景色を、この瞬間を目に焼き付けたいと思います」
それを受けて緋本はぐみが締めくくる
「次で最後の曲となります。今日は皆さんと一緒に2周年という大切な日を過ごせて本当に幸せでした。宝石のような一日をありがとうございました」
そしてラストとなる18曲目『gemmy day』 のイントロが流れた。
2周年ライブを約1か月後に控えた8月10日に緋本はぐみの卒業が発表された。
緋本はぐみはその頭脳でグループを的確に見つめるメンバーである。そして幅広い経験と視野に裏付けられた唯一無二の存在感は何物にも代えがたい。
パレパレはグループとしては今が正に伸び盛りでこれからの発展は間違いはない。だが一方で溢れんばかりの才能に恵まれた緋本だからこそ、私は彼女の多くの可能性を見たいという気持ちとの二律背反に陥る。
総てを手に入れようと願えども、青春は刹那の中を無常に駆け抜けていく。軽々しく言葉を発することはしない緋本だからこそ、彼女の決断を止めることなど誰にも出来ないのだ。
デビューから駆け抜けてきた6人の物語は緋本はぐみの卒業ライブを10月9日で終幕を迎える。その最後の瞬間まで6人の軌跡を見届けたいと思う。
『gemmy day』のラスサビではパレパレのライブでは初となる銀テープが発射された。
煌びやかな景色の中、確かな充実感とそこはかとない寂寥感と共にPalette Parade2周年ライブ『Pa Pa March』は大団円を迎えた。
決して順風満帆とはいかなかった2年目のパレパレであったが、結果的には最高の締めくくりとなった。
それにはメンバーの毎日の頑張りはもちろんのこと、2周年ライブに向けてのスケジュール管理、広報、グッズや当日の告知などの全般について、これまでの状況を踏まえて改善していった運営側の本気も相まってのことであろう。
パレパレも気付けば3年目。3年を超えて活動するアイドルは相当に数が少なくなることからも分かるように、その真価が試される一年となるであろう。
コロナは明けたものの、アイドル業界を取り巻く状況は相変わらず厳しく、さらに日々新たなアイドルが産まれ群雄割拠の様相を呈している。
一年後のアイドル業界がどのような姿になっているのかは私には分からない。だが、パレパレの未来には不思議と一縷の不安もない。
それは彼女たちが築き上げてきたものへの信頼であると共に、ここが帰れる場所であるという優しさに包まれているからだ。
更なる進化を遂げたパレパレは今、一番ライブが楽しいアイドルであると贔屓目一切抜きに自信を持って言える。
気付けばあっという間に成長してしまっている彼女たち。その瞬間を見逃さないように、私はこれまで以上の期待を持って彼女たちを追いかけたいと思う。彼女たちの紡ぐ未来は宝石のように光り輝いている。
白川千尋によるライブの締めのコメント
「本日は改めてありがとうございました。私たちパレットパレードはもう3年です。もう3年目に入ります。
”あの頃が最高だったな”じゃなくて、「あの頃も最高だったけど今が一番最高じゃん」という瞬間をこれからもみんなと、一番近くで更新していきたいなと思います。
今日初めて出会ってくれた方も、いつも大好きでいてくれるみんなも。みんなパレパレは君がいつでも帰れる場所です。3年目のパレットパレード絶対に止まりません。これからもついてきてください。よろしくお願いします。本日は本当にありがとうございました。」
メンバーコメント
森月音羽
今日はこの2周年ライブにお越しいただき本当にありがとうございます。
私はこの日をずっと楽しみにしていて、今日までのレッスンとかがずっとずっと楽しくてこの日を迎えられて幸せです。これからも頑張ります。皆さんの事が大好きですありがとうございました。
中野小陽
今日は皆さん本当に来てくれてありがとうございます。ずっとデビューの時から6人で立ちたいねと言っていたこのステージに2周年という節目で立つ事が出来て本当に本当に嬉しいです。
その重さを、立つ事のありがたさを知っているからこそ、緊張とか不安も沢山あったんですけれども皆さんとこの景色を見ることができて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
白川千尋
今日は皆さん楽しかったですか?(客席からの歓声)私もすっごく楽しかったです。なんか2年前までただの学生してた私がこんな憧れの舞台で、大好きなみんなとキラキラの景色が見れて本当に幸せです。
いつであっても運命だと思うのでいっぱいキラキラの楽しいこと、一緒にしましょう。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
緋本はぐみ
今日は来ていただきありがとうございます。もう自分、こういう大きいライブの前はめっちゃ緊張して、やばいどうしよう、無理かもしれないってなるんですけど、今回決まった時からずっと楽しみでこうやってこんな沢山の人と一緒に2周年ライブをこの場所で迎えられたこと本当に嬉しいです。ありがとうございました。
葵うた
もう二年もたつのかとすごいしみじみなんですけど、1周年もそうですしデビューライブもツアーファイナルも東名阪ツアーも色々やってきてやる度に来てくれる人がどんどん増えていくのが目に見えて分かって、パレパレがどんどん好きになっていってくれる人が増えるのが凄くうれしいです。
これからも頑張っていくのでみんな最後まで。最後まで?最後とかないか(横の比嘉と顔を見合わせ笑う)ついてきてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。
比嘉ゆめの
今日は改めて来ていただきありがとうございます。EASTが決まった時に、こんな沢山の人と迎えられるかなと。頑張ったり楽しみもすごいあったんですけど、みんながSNSとかで「パレパレ良いからぜひ来てください」とか言っているのを見て、そういう環境の中でこうやってめちゃくちゃ大好きなアイドルが出来ていることが幸せです。これからもまっすぐに私達らしく進んで行くのでよかったらこれから先も一緒にいてくれると嬉しいです。
いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。ありがとうございました。
Palette Parade2周年ライブ『Pa Pa March』セットリスト
- スタートライン
- スプラッシュアンカー
- 心羽根模様
- Brand New, Brand New Days!!
- 明日の私は主人公
- 可愛くなる
- Bad Genius
- 未来図
- ときしゅわ!
- Life is Dramatic
- シャイガール
- 起きて笑おう果報者
- UKIYO-YO ONDO
- フレフレ
- アイビー
アンコール
- PARADE
- わたしトレイン
- gemmy day